2017.9.29
宝湯
奥能登芸術祭で一番印象的な展示が「宝湯」でした。写真家 石川直樹さんの作品でもあります。作品でもあるというのは、ここの銭湯はまだ現役で営業を続けているそうです。
石川直樹さんの展示はタイトルを聞いたときは、それほど興味を持てませんでした。しかし、芝居小屋から温泉旅館となった歴史を、写真を通して伝え、空間としてもわかりやすく再現していました。また、写真を撮りたくなるような魅力的な空間・光を演出していました。
自分で写真を撮るだけではなく、空間を再構成して、写真を撮らせてしまう。そんな凄みを感じました。
入り組んだ迷路のような建物の中に、広めの舞台と広間。裏側には年代物のボイラーがあったり、カラフルなかわいいタイルのお風呂があったり。
もともと複雑な建物なのかもしれませんが、迷路のような空間を巧みに一周できるように導線が作られていました。最後には銭湯のシンボル、煙突の隣を通れるようになっていて、とても練られた奥深い作品でした。
こういう芸術祭ってお祭り感覚で、みんな新しいものを作ることが多いと思うのですが、既にそこにあるストーリー・魅力を見抜き、作品として伝えているところがとても魅力的。ものすごく満足感の高い作品でした。